在宅期間中の人事評価について

緊急事態宣言による「テレワーク・在宅勤務と人事評価」について

5月4日に新型コロナウィルスに関する緊急事態宣言が延長されました。その中で、「新しい生活様式」が提言され、以前から推奨されていたテレワークのより積極的な推進が急務であるとされています。
ところが、テレワークを導入している企業の割合は、総務省の調査(昨年11月時点)によると19.1%でしたが、同列に比較はできないものの、厚生労働省がLINEと共同で実施した調査(今年の3月31日~4月1日)では5.6%、日本商工会議所のデータ(3月13日~31日)では26.0%となっており、なかなか進みません。巷間取りざたされるように、業界別、規模別に濃淡がありますが、テレワークは未だ一般的な勤務形態とは言えないのが実情です。

戸惑いながらの自己裁量と評価

テレワークには、基本的に出社はしない「在宅勤務」と出社を前提とする「モバイルワーク」の二つの形態があり、いろいろな論点がありますが、今回は緊急避難的に「在宅勤務」している場合の「評価」に絞って考えてみたいと思います。
緊急事態宣言に則って始めてみたものの、「在宅勤務対象者をどのように評価(個人業績)するか」という古くて新しい問題を解決しないまま実施に踏み切っている事業者も多いのではないでしょうか?
この問題は、ITシステムが普及している現在でも、導入されない企業での言い訳で使われることも多く、テレワーク普及にとって一つの壁となっています。 今回、本来の在宅勤務制度の仕組と狙いであったワークライフバランスの推進とは違った形で急に導入されたため、自己裁量に任せられる部分が大きくなり、戸惑いながら仕事をしている従業員は多いのでないでしょうか?
以前は時短勤務や在宅は出社時間が短いことで、成果に似合った評価がされづらい傾向がありました。
従業員の目から見ると上司に日常の働きぶりを見てもらえず評価がどうなるのか、不安に思っておられるのではないでしょうか?一方、評価者(管理監督者)にとっては現場レベルでの管理が難しく、評価をどうすれば良いのかという戸惑いもあろうかと思われます。 在宅勤務期間中、「職場にいる時間が減る」 → 「上司が働きぶりを確認できない」 → 「部下はきちんと仕事をしているのかが証明できない」 → 「お互いが疑心暗鬼になる」という負のスパイラルに陥ったり、「個人業績」の評価がマイナスに振れるようなことがあってはなりません。

当初の目標設定を必ず期中で確認、修正する

在宅勤務は従業員にとって、大きな裁量を持たされた責任は大きいとの自覚を前提に、自己裁量を最大化でき「個人業績」と評価を伸ばすチャンスでもあると考えられます。また、マネジメントにとっても、権限移譲を思い切って行い、常に細かい指示をしないでも、業務が遂行されるような仕組みを構築できるならば、時間を有効に使えるとともに、マネジメント能力の向上につながります。
具体的な対策としては、週に1、2日程度の在宅勤務とは違い、今回のように長期にわたる出社禁止的な要素の強い場合は、既存の制度だけでは期首に上司と合意した評価に関わる「目標設定」に大きな影響が出るため、定期的にオンライン面談を行ったり、今まではあまり注力していなかった、中間レビューをじっくり行ったりして、機動的に設定項目の見直し、修正を加えることも必要でしょう。
その場合、今までの、上司による部下の管理・監督という概念ではなく、自主性や自発性を導き出すコーチングの手法を取り入れていくことが有効だと思われます。
さらに、今後の課題として、評価制度を職位に応じ「成果 > 業務プロセス型」にしたり、「会社業績と個人業績のウエイト付けを再検討」するなど、テレワークを恒久的プランとして導入するための人事制度全般の整備を進めるとともに、BCP(business continue plan)の中に緊急在宅勤務時の目標管理の再設定、評価の仕組を盛り込むべきだと考えます。
この新型コロナウィルス(COVID-19)が収束した際に、在宅勤務期間中に出した個人業績が正当に評価される仕組みが定着し、災い転じて福となすような形で、「働き方改革」がさらに進化することを期待して止みません。
2020年5月8日
ライター:一般財団法人雇用開発センター 山崎知郎
30年来、国内大手上場企業、外資系IT企業で人事と経営企画に携わる。
人事企画・労務・採用をはじめ構造改革・人事戦略など、経験は豊富であり人事全般に精通している。
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