現場コラム【多様な介護の仕事】 -1-
グループホームの仕事

グループホームをご存じですか?グループホームとは、お年寄りが少人数で暮らす民間の施設ですが、「認知症」と診断をされている方が入所条件です。

グループホームの1日

施設の一日の流れを大まかに説明します。施設の利用者は、だいたい朝7時頃に起床して皆で食事をとります。この食事は、入居されている利用者が、介護スタッフの見守りのもとに、ご飯を研いだり、野菜を切ったりして朝食を準備します。食事が済んだら食器洗い、後片付け。洗濯物を干したり、掃除機をかけたりもします。この作業も、利用者が分担して行います。どちらの作業も、もちろん、手足が自由にきく方にお願いしますが、多少ご不自由な方にもお盆を拭いたり、洗濯物を部分的にたたんでもらったり、できることはしてもらいます。また、バイタルチェックといって利用者の血圧や心拍数、体温を測って、その日の調子をスタッフや看護士が見ます。それから、ゆっくり午前のお茶を楽しみ、TVを観る人もいれば、体操したり、歌ったりします。お昼が近づくとお昼ご飯の買い物も行かなくてはなりません。もちろん、スタッフ共々利用者が行きます。そして、お昼の支度をして…と、朝ご飯同様の流れです。

ここまで、読んでピンときた方は多いと思います。そう、グループホームとは、認知症の方に自分でやれることはやっていただきながら、普通に生活していくことを目指していく施設なのです。その生活していく流れをつくるのが介護スタッフの役目です。

施設スタッフの大切な役割は「見守り」

普段は利用者が包丁やガスコンロを使うこと、掃除機を使ったりポットのお湯を注いだりする作業一つひとつを正しく安全に行えているかを見守ります。認知症は行為の手順を忘れたりするので、見守りという行為が大事になるのです。

だからスタッフの仕事は、利用者の見守りに始まり、見守りに終わるといってもいいかもしれません。利用者と一緒にご飯を作り、掃除し、ゲーム等のレクレーションをしていくなどの、生活を援助していくことが一つです。もう一つは、体の不自由になった方の食事やトイレ、入浴のお手伝いをしていく身体介助。それと、グループホーム以外の施設では、看護士さんが行うことの多いバイタルチェックや服薬も仕事になります。

また、グループホームの介護スタッフはケアマネージャーがつくるケアプランの素案もつくります。利用者が、何ができて、何ができないかの生活動作を一番知っているのは、介護スタッフなのですから。

利用者をよく観察して、守っていく。一見簡単で楽そうな仕事に思えますが、「認知症」であることが一筋縄ではいかないところです。スタッフがどんなに一生懸命お世話し、声かけしても、「お風呂なんかいやだよ」「買い物なんか行かない」「うるさい、あっち行け」と言われることもしばしばあります。また、スタッフがAさんをトイレにお連れし、用足しを待っている間に、一人で歩けないBさんが車椅子から立ち上がっちゃった!という間に、Cさんがスタッフの側にやってきて、「そろそろ息子にご飯をつくらなきゃだから、帰ろうと思うの」と言って、スタスタ入口に向かって歩いていく。

こんな毎日の繰り返しです。

魔法が生み出す「やりがい」

認知症の方に接していると、理屈や手順などが通用しないのがグループホームの現場です。それでも何故か不思議と利用者を守りたい、楽しい生活を送ってほしいと思うスタッフが多いのも事実です。そのように感じるのは、認知症の方が、スタッフに“やりがい”を引き出す魔法にかけているのかもしれません。

PageTop