現場コラム【新人、介護の仕事奮闘中】 -9-
高齢者施設によってかかる費用が大きく違う。

現在私が勤務している施設は、「住宅型有料老人ホーム(介護サービスも受けられます)」と呼ばれる高齢者施設です。老人福祉法の規定で「介護付き有料老人ホーム」と表示してはいけないそうです。施設内に居宅介護サービス事業所(ホームヘルパーステーション)が併設されていて24時間介護職員が常駐しています。提携の医療機関とも専用のホットラインで結ばれています。民間企業が運営する高齢者施設ですが、介護福祉施設ではありません。
介護や福祉に関係の無い方には、特別養護老人ホームや有料老人ホームといった施設の区別やその特徴などが非常に分かりにくいと思います。私自身、ホームヘルパー講座で習ってはみたものの正しく理解出来ていたか少し不安が残ります。働いてみてあらためて認識出来たことがたくさんあります。
先ず、高齢者施設は大きく分類して以下の二つに分かれます。
都道府県や各自治体、社会福祉法人などが運営の主体となっていて、老人福祉法に基づいて設置が許可された老人福祉施設(例えば特別養護老人ホームなど)と、民間企業が運営する有料老人ホーム(「老人憩いの家」などの名称もあります)です。民間企業が運営する有料老人ホームは老人福祉法上の施設とはみなされていないため「老人福祉施設」と名のることは出来ません。利用する側として見た場合、老人福祉法に基づく施設とそうではない施設との大きな違いは何かと言えば、それはズバリ利用料金が全然違うということに尽きると思います。前者の特別養護老人ホーム(以下、特養)の場合は比較的低料金[月額(約6万円~12万円くらい/介護保険適用分含む)]です、入居する初期費用として権利金(入居一時金と呼ぶ場合が多い)のようなものはありませんので、年金と多少の蓄えがあれば長期間の入居が可能だろうと考えます。それに対し民間が運営する有料老人ホーム(以下、有料)の場合は、施設によってもさまざまですが毎月約15万円~30万円(介護保険適用分含まず)の費用を要します。加えて入居一時金として[百万円~数千万円までいろいろ(施設による)]が必要となります。入居一時金は概ね5年~10年単位(もっと長い場合や終身の場合もありますが)で契約更新となるため、長生きをする高齢者の場合は更新毎に入居一時金を支払わなければなりません。なぜこれほど料金に大きな差が出るのか?それは、前者の場合は公の機関から然るべき資金補助を受けて建設も含め施設運営をしています。民間の場合は補助金がありません。そのため入居を希望する利用者若しくはその家族に、施設建設費用を含め運営全般の費用負担を全て委ねることになります。
料金面以外の相違点としては、重度の介護もしくは看護が必要となった場合「特養」は引き続き入居が可能ですが、「有料」の場合は契約を打ち切られて退去となる場合もあります(契約書に小さな字で細かく書いてあったりします)。これは、それぞれの施設の成り立ちが根本的に違うためだと思います。「特養」は福祉施設としての契約ですが、「有料」は不動産賃貸施設としての契約になることが多いためだと考えます。ひらたく言うと特養は「終の棲家」として非常に安心して入居していられますが「有料」は必ずしもそうとは限らない様に感じます。
当然、「特養」に入居を希望する高齢者が集中しますが、施設数や入居受け入れ人数が圧倒的に少ないのが現状です。良く何百人待ちとか何年待ちとか言われるのは施設と入居希望者の需給バランスが悪いためです。数ヶ所の「特養」に入居申請を行い入居許可が出るまで「有料」や「老健」など他の高齢者施設で介護を受けながら順番を待つといったことはめずらしくないことの様です。私が勤務している施設でも、「特養」が決まったので退去された利用者や不穏行動が続いたため退去となった方が実際にいます。
「老健」も近年は数年単位の長期入所者が増えているようです。「老健」は基本的に病院機構なので、本来であれば三ヶ月単位で転院を条件に入居する施設ですが、家族が自宅への帰宅を拒否したり「老健」側も空きベッド対策として継続入所を行うケースが増えて来ているため結果的に「老健」に居続けることになってしまっているのが実態です。
自分の親を・・・と考えた場合はもちろん、働くという立場でも施設選択はよくよく検討した方がいいな~と感じます。

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