現場コラム【新人、介護の仕事奮闘中】 -16-
福祉移動サービス認定講習に行ってきました。

 料金を頂いて人を車に乗せ、乗客が指定する場所まで移送する事は、特別な場合を除いてタクシー事業者(一般旅客運送事業)が行う行為として法律で指定されています。

 今回受講した「福祉移動サービス認定講習」は自家用車を使用して、人を乗せて移送する事が出来る“福祉有償運送”を行うための要件のひとつです、国土交通大臣認定の講座となります。講習の名称は「福祉有償運転者講習及びセダン等運転者講習」です。講習は国土交通大臣より許可を受けた認定団体が行います。受講が修了すると認定団体が発行する修了証を受領出来ます。これを持っていると自家用車を用いて人を乗せて通院や通学の送迎業務を行う事業所に所属し、事業所が運輸支局にドライバーとして登録すると、福祉有償運送業務につくことが出来ます。本来、自家用車で人を送迎する行為は無償か謝金程度、有償で行なうと白タク行為として違法となります。

 2006年(平成18年)10月1日に道路運送法が改定され、“特別許可”としてみなされていた福祉有償運送が法第78条第2号に規定する「自家用有償運送」の一類型として位置づけられる様になった・・・・・法律上も認められ明示される事となった。(ウィキペディアより抜粋)

 道路運送法の改定により、福祉有償運送が合法的行為として事業展開が可能になりました。ひらたくいえば、自家用車でタクシー事業の様な事を行う事が可能になった訳です。とはいってもいろいろな制限があるのも事実です。この「福祉有償運送」とは、交通弱者を安全で安心な環境を担保しながら、移動サービスを提供する事業となります。では交通弱者とは誰か・・・。自立ですが移動が困難な高齢者や、障がいを持っていて公共の交通機関の使用が困難な人達を総体的にさします。この様な方々を、一定の要件を満たし介助も行うドライバーが、「ベッドtoベッド」あるいは「ドアtoドア」で移動手段を提供するわけです。求められる介助資格は、介護職や医師・看護師の他に、前述の国土交通大臣認定の“セダン等運転者講習”などが要件となります。運転技能についても二種免許の取得か、国土交通大臣認定の“福祉有償運送運転者講習”を受講修了することが求められます。

 基本的にタクシー乗務員やバスのドライバーは、ケアリクス(介助事故)防止の観点から、直接乗客の身体に触れる事を事業者側が制限しています。一般の方はあまり見かけることはないと思いますが、タクシーやバスの乗務員が、車いすを使用している乗客の傍らでドアだけ開けて乗車するのを待っていたりするのは、乗客の身体に触る事がこの様に制限されているためです(一方では面倒くさいとの意見も有るようですが・・・)。

 交通弱者には要介護認定を受けた高齢者も含まれます。通常この様な高齢者が通院したり、外出したりする場合は、公共交通機関(タクシーを含む)を使用して、介護職員やご家族が同行しなければならないのが実情です。今回受講した福祉有償運送のシステムを利用すれば、交通弱者が単独で通院や通学はもちろん、法事や会合・レジャー等(一部指定地域)の外出も可能となります。

 移動サービス提供の対価は「福祉有償運送」の事業者が決める事が出来ますが、基本的な運賃については、地域のタクシー事業者の概ね半額以下と決められています。運賃以外の費用として、“迎車料”“乗降介助料”等が別途必要となる場合もあります。移動手段を安く・安全に提供する事が本来の活動の目的となっているため、高額な料金設定が出来ないのが現状です。一般の旅客運送事業と比較して、ボランティア性が高い事業のため、利用者の負担を最低限に抑える努力がされています。反面、自家用車(軽自動車も可能)を使用して運送事業を展開できるので、事業用車両(グリーンナンバー)として車両登録の必要が無く管理コストが軽減出来る事が、事業運営のメリットのひとつです。

 私の受けた講習は全部で2日間です。私の住んでいる地域では毎奇数月に開催されます。全ての講習に遅刻・早退をする事無く出席し、実技認定で一定の水準に達していない場合は、安全を配慮して事業所へ報告することがあるそうです。1日目は座学で、移動支援の知識と技術をテーマに、スライドやテキストで講習を受けます。2日目は、安全運転と介助実技の実習です。講師は自衛官OBや自動車教習所教官OBの方々です。障がい者のモデルの方も参加して、車椅子を使用した乗・降車方法・福祉車両の操作方法・Gメーター(重力検知器)装備車によるブレーキングやコーナーリングの安全走行検定などを受けます。

 車いすの操作方法は、勤務先の施設でも毎日行なっているので特に問題ありませんが、福祉車両の操作や、Gメーター測定テストとなると、相当に優しい運転を心掛けないとすぐ教官の注意を受ける事になります。実技は教習所を借り切って基本的な車両点検から始まり、発進→S字走行→クランク走行→縦列駐車→方向転換→坂道発進→障害物回避→停車までを何度も練習します。教習所内を走行するのは免許を取得する時以来ですし、助手席に教官を乗せて路上を走行するのも久しぶりなので非常に緊張しました。実技はGメーターの測定数値と合わせ教官による採点が行われます。A~Dまで4段階評価で、よほど危険な運転をしない限りは落第点になる事はありません。すべての講座を終了すると教室に移動して一人ずつ名前を呼ばれ修了証の授与式が行われます。

 今回の参加人数は60人程でした。介護施設勤務の方が大半で、タクシー事業開設予定者の方もいました。修了証は受講者個人に授与されるもので、どこかの法人もしくは団体に所属して介助支援ドライバーとして運輸支局に登録する事になります。経験を積んでから、団体を設立したり介護タクシーとして開業したりするようです。私は、市内のNPO法人に登録し身分証を発行してもらいました。受講費用はテキスト代込みで9,000円でした。

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